日本青年会議所 建設部会 2021年度 部会長所信


~繋がり~

~伝統と新たな価値が織り成す魅力溢れる建設部会の創造~

【はじめに】

第55代部会長
中村 謙

2019年末より発生した新型コロナウイルスによる新型肺炎は、2020年に入ると世界各地に広がり、社会的、経済的、そして政治的危機を引き起こしながら、いまなお、私たちの生活に甚大な影響を与えています。日本でもインバウンドの減少に加えて、国内消費が広く抑制されるなど景気下押し効果が強まることが懸念されており、建設業界でも従来の人手不足に加わり、コロナ影響による2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の延期、労働環境や社会環境の変化が生じます。今こそ時代に即した青年会議所運動を展開してきた我々が会員企業や関係省庁・諸団体はもちろん、建設産業、建築物、建設物に関わる様々なステークホルダーを巻き込んで、建設業における
構造転換が必要になります。

【建設業界の動向】

現在、建設業界においては、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の延期、各種工事の延期はあるものの、2025年の大阪万博、2027年のリニア新幹線開業、都市開発、耐震防災工事が控えております。近年では、新規案件以外にも、既存のインフラにおいて維持・補修・改修を行うといった維持修繕工事の割合が増加しています。これは高度成長期に大量に整備されたインフラ設備が老朽化してきており、修繕改修の時期に差し掛かっていることになります。既に見込まれている大型案件や維持修繕工事の影響を鑑みると、2020年度以降も当分は引き続き高い建設需要が維持されることが考えられます。このように高い需要が維持される中、建設業界で一番の問題となってくるのは、やはり労働力の確保になります。また、ICTやAIなどの最新技術を活用し、業務の効率化を図り、人手不足の解消と生産性の向上を解消することも建設業の重要な課題となっております。社内での業務の簡素化、建設現場での事故・災害の防止や熱中症への対策はもちろんのこと、電子機器や通信技術といったICT化により、社内や部署内の情報の共有・管理、現場作業員安全・健康管理、人の移動の効率化による職場環境を提供し、生産性の向上や若手入職者の増加に繋げていかなければなりません。

労働者の高齢化と減少が進む中での人材確保のための働き方改革、女性の活躍促進、外国人技術者の育成、労働生産性向上のためのIT化やAIの導入、オフィス環境、企業運営は必要不可欠になっています。今後の高い建設需要に対応するためにも建設部会では労働力の確保・維持並びに生産性の向上を最重要課題として取り組んでいきます。

【建設業における環境問題】

我々が暮らす地球は、経済的に豊かになっている反面、地球温暖化や海洋汚染、人口爆発など様々な環境問題を直面しています。これらの環境問題の多くは人為的な要因によって引き起こされているということを認識しなければなりません。また、我々が携わる建設業は、他の業種と比べて環境負荷が大きいため、環境に配慮した建設活動や環境と経済活動の両立などが重要な課題になります。

建設業を規制する数多くの環境関連法は、年々新たな法規制や改正が進み、企業の責任と負荷は増加傾向にありますが、中小規模の建設業者では人材不足や担当者の高齢化により、法的要求事項への対応が年々困難な状況になりつつあります。このような中で、建設業は「低炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の統合的な実現に向け、建造物のライフサイクルを通じて環境関連法規制の遵守、環境負荷の低減、環境の保全、社会貢献活動などを今以上に実践し、持続可能な社会の構築に貢献する必要があります。

【会員交流】

建設部会の魅力は、全国各地から集う約2000名の会員によって構成されたネットワークがあります。現役会員とシニア会員との交流を通じ、新たなネットワークを構築することで、建設部会の目的であるビジネスを中心とした会員の交流を通して個人の資質向上と会員企業の成長を図ります。また、活動の中で感じた魅力や得られる経験を伝え広めることは、建設部会の魅力発信において大きな推進力へと繋がります。我々は建設部会の魅力を徹底的に調査研究し、全国各地に伝播するとともに、個々が運動の意義や目的をしっかりと理解した上で、積極的な会員交流ができる機会を創出します。

【全国部会員大会】

全国各地には様々な要素の素晴らしい魅力が数多くあると感じます。そんな地域の魅力を目で見る事や肌で触れる事で初めて得られるものが多くあり、その魅力を実感する我々が増えることで、地域社会の活性化に直結し、運動目的を達成する近道であります。

人と人との繋がりが最大の魅力である建設部会は創立55周年を迎え、先輩諸氏が築いてこられた歴史と伝統を継承し、建設部会で培ったネットワークを活かし、建設業の新たな魅力を発信できる全国部会員大会を実施します。

【関係省庁との意見交換】

会員企業が抱える問題や年間事業を通じて、会員企業から情報を集約し、産学官民一体となり連携していくことが新たな建設業の地盤に構築します。国とは地域の延長であり、地域の諸問題を抜きにして成り立つものではありません。我々は地に足を付いて地域課題を明確にして問題提起を関係省庁や諸団体に提言していくことが新たな価値を提供することに繋がると確信します。

【災害支援】

日本は、世界有数の地震大国・火山大国であり、数多くの急峻な河川を抱え、毎年襲ってくる台風や集中豪雨により河川の氾濫や土砂くずれなどが発生しています。さらに、国土の約半分は豪雪地帯に指定されています。こうした厳しい自然環境において、人々の生活を守る重要な役割を担っている地域の建設業の会員は建設部会に多く在籍しています。

災害に対して建設部会として、様々な災害における考え方を再度見直し、我々が持つ広域性メリットを最大限に活かすことで、日本青年会議所、各地建設クラブ、関係省庁、諸団体との強固な連携のもと、迅速且つ的確な災害情報を発信し、初動対応のみならず復旧・復興への継続的支援も行っていきます。

【組織運営】

建設部会の全ての活動の基盤である事務局では現役会員及びシニア会員からより信頼される組織運営となることが必要になります。事務局業務を適切に行い、さらなる円滑化を図り、より安定した組織運営を実施します。そして、財務局では建設部会運営の会計全般及びスムーズ且つ有意義な予算執行を実施します。また、広報では建設部会として、進化するSNSを活用し、全国各地の情報を瞬時に確認でき、参加意欲を掻き立てる情報発信を心掛け、会員がどのような情報を欲しているか的確に見抜き、迅速な情報発信に努めます。

【結びに】

繋がりとは、運動発信過程で得られる地域社会との繋がりや、会員同士の繋がりといった有益なコミュニティが様々な場面で創出されます。また、運動発信や活動プロセス、活動の中で得られる友情、時には目の前の苦難さえをも楽しむといった運動目的を達するための修練を繰り返す中で得られます。会員個々が「真に豊かな社会づくりに貢献する」という最大の運動目的の下に、地域社会において新たな価値の根源を生み出す運動を展開し続け、その意義や目的を達成する過程において非常に重要であり、建設部会の発展はもとより会員個々の人生をより豊かにしてくれます。建設部会第55代部会長として多くの人を巻き込む運動発信を心掛け、繋がりの素晴らしさを多くの会員に伝え、一人でも多くの会員に心底実感して貰える機会を創出することに注力するとともに、建設部会に対する参画意識の向上を強く推進して参ります。各地クラブ代表、シニア会員を初めとする絆深き同士とともに、魂を込めた運動を発信し、日本の建設産業の正しい発展と日本文化の向上の一翼を担うことで、伝統と新たな価値が織り成す魅力溢れる建設部会を創造します。

第55代部会長 中村 謙